大阪地方裁判所 昭和45年(ワ)6456号 判決
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〔判決理由〕一、事故
請求原因第二一の事実は当事者間に争いがない。
二、責任原因
請求原因第二二(一)の事実は当事者間に争いがない。
<証拠>を綜合すると本件事故現場はほぼ東西に通ずる東名高速道路上り線上であり、右道路は北側から幅三メートルの路肩部分、幅各三、六メートルの走行車線および追越車線の順に白線で区分されており、事故現場の西北方には御殿場インターチェンジから右道路に入る加速車線が存し、多少上り勾配となつており、右高速道路上の大型貨物自動車の最高速度は毎時八〇キロメートル、最低速度は毎時五〇キロメートルと指定されており、当時附近に他の車両はなかつたこと、大河原は、約一一トンの硼砂を積んだ加害車を運転中、小用のため御殿場インターチェンジから右道路に入る加速線の北側の路肩部分に停車したのち発進し、右加速車線を西から東に向つて約一三七、四メートル進行して走行車線に入る前に右後方に被害車が西から東に向つて走行車線上を進行してくるのを発見したが、そのまま走行車線に進入しても被害車は追越車線に入つて加害車を追越してくれるものと考え、時速五〇キロメートル以下で走行車線に進入して徐々に加速して約九五メートル進行し、時速四〇ないし五〇キロメートルで進行中被害車が加害車の後部に追突し、その衝撃を感じてブレーキをかけたが六〇メートル以上進行してようやく停止したこと、岩本正治は、被害車を運転して右走行車線を西から東に向つて時速八〇ないし八五キロメートルで進行中、自車前方の走行車線上に低速で加害車が進入してきたので、これに急速に接近したが、ハンドルを右に切つて追越車線に出ることも、ブレーキ操作をすることともせずにそのままの速度で被害車を加害車の後部に追突させ、加害車の後部に接着したまま約六一メートル進行して停止したことが認められ、証人大河原隆三の証言中右認定に反する部分はたやすく措信し難く、他に右認定を左右しうべき証拠はない。
以上の事実によれば、大河原は、加害車を運転し、加速車線から走行車線に入る際には、時速五〇キロメートル以上で進行し、かつ走行車線を進行中の他の車両の進路を妨害しないような車間距離をとつて進入するべき注意義務があるのにこれを怠り、最低速度の時速五〇キロメートル以下で、しかも走行車線を進行中の加害車がハンドル、ブレーキ操作によつて追突を避けなければならないような距離でその前方進路に進入した過失があつたもので、本件事故発生は大河原の右過失がその一因となつているものと認められるから、被告は、加害車の運行供用者としての責任を免れないものというべきである。
三、権利の承継
請求原因第二三の事実は当事者間に争いがない。
四、損害
(一) 岩本正治の逸失利益
二、九四二、七二二円
<証拠>を綜合すると、岩本正治は、事故当時三六才で、昭和四四年四月一一日からセントラル運輸株式会社に自動車運転手として勤務し、同年一一月から昭和四五年一月までの三ケ月間に二五二、二九一円の収入を得ており、一ケ月平均収入は八四、〇九七円であつたこと、岩本正治は、事故当時妻の原告滋子と二才六ケ月の長女の原告麻里、生後一ケ月の二女の原告麻紀と四人家族で生活していたことが認められ、右認定に反する証拠はない。以上の事実によれば、岩本正治は少くとも事故後なお二二年間は就労して右収入を得ることが可能であつたもので、その生活費は多くとも収入の二分の一程度と考えられるから、岩本正治の死亡による逸失利益を年毎のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると別紙計算書(2)記載のとおり七、三五六、八〇五円(円未満切捨)となる。
前記二の事実によれば、本件事故発生については岩本正治にも加害車を運転中前方を注視し、先行車との車間距離が急速に接近してきた際にはハンドル、ブレーキの操作によつて追突を避けるべき注意義務があるのにこれを怠り、ハンドルを右に切つて追越車線に出るか、又はブレーキをかけて追突を避けることが十分可能な状況であつたのにその操作を全くしなかつた過失が存したものと認められ、損害額の算定についてしんしやくすべき岩本正治の過失割合は六割とするのが相当であると認められる。
従つて岩本正治の逸失利益の損害は七、三五六、八〇五円の一〇分の四の二、九四二、七二二円となる。(山本矩夫)